日本の教育改革はどう進むのか!
駒込学園 校長 河合孝允
①近年の教育改革のキーワードは「AI(=人工知能)」です。このAIのウエイトが年々高まって来ています。そして、このAIの台頭が社会構造を根本から変革して来ています。教育界も例外ではありません。
②現在進行中の「産業革命」は「第4次産業革命」とよばれます。その最大特徴は、AI技術の発達に応じてAIが「肉体労働」を代替するだけでなく、ほぼ「全ての事務労働」や「頭脳労働」を代替する方向に走り出しているということです。10年以内に日本の職業の49%はAIに代替されるとまで予測されています。新しい時代は[Society5.0超スマート社会(=完全自動化社会)]と呼ばれます。その時代が到来しようとしているのです。
③現時点でのAI〔東ロボ〕の大学受験能力は8割の大学に合格できるところまで来ています。何の手も打たずにこのまま行けば、大学進学者の知的能力が上位2割(受験人口比で同世代の1割)を除き、大学進学者の8割〔同世代の9割〕が就職できずに、「AIで代替される」可能性が強まっているのです。企業にとって人件費が9割削減できることは大歓迎すべきことであるからです。「省力化」を大胆に推し進めたスマート企業のみが勝ち残れる時代だからです。「普通の大学」を出ても、それだけでは就職も出来ない時代(デストピア時代)が目前に迫っているのです。
④そうなると大半の人々が仕事を失い、ごく少数(同世代の1割未満)の高レベルの能力を持った人たちだけに「仕事」と「富」が集中して行く流れが生まれることになります。
⑤一方、日本の少子化は世界に類を見ない速度で進行しており、10年後の2030年にはOECD加盟国中最下位になります。これまで120万人をキープしていた同世代人口が80万人台まで急減します。少子高齢化社会が一気に加速されて訪れます。
⑥したがって、大学の数は余剰化しており定員割れする大学が増加しています。すでに法改正が行われ「大学をまたいでの不良採算学部の統廃合」が進行しています。
⑦AIの台頭と少子化の大波は大学教育の存在理由や意義を根底から揺さぶり、大学の全面的変革を必然化させています。
⑧大学入試制度の改革はこの逼迫した危機感に基いて行われているのです。この時代変化を客観的・分析的に考察して、いち早く、中高段階から新時代対応の教育改革を行い、「AP・CP・DP」を開示した「先進的大学」に生徒を送り出す学校だけが、公私を問わず受験生を持つご家庭に信頼され支持されてゆくものだと考えています。
⑨本校はこの改革路線に中高とも高い評価をいただいて、この春も定員を大きく超える新入生にお入りいただいています。中学は学則定員120名〔3クラス〕を176名(5クラス)、高校は学則定員360名のところを511名(12クラス)の計687名(17クラス)にお入りいただいています。
⑩本校の改革は「教育特区校=併設型中高一貫校」となってすでに5年目に入ります。難関大学進学実績も大きく伸び、東大大学院2名はじめ、早慶上理、GMARCH以上に228名が合格しています。京都大学、防衛医科大、東京医科歯科大、東京藝大、筑波大、千葉大、電通大、埼玉大等の国立大学への進学も順調に伸びています。
⑪では、新しい時代に求められる「学力観」とは何でしょうか?
人工知能AIは、現実と向き合って悩んだり苦しんだりしません。実社会の中で出会うさまざまな問題の解決を考えたり発見したりするのはどこまで行っても人間です。この「問題解決能力」が「新しい学力観」の中心になります。廃止されたセンター試験に代わる「大学入学共通テスト」も「問題発見・問題解決型」の「教科横断型テスト」に移行して行きます。例えばこれからは「社会科と数学の統計学」が融合した問題が出されます。経済学部の受験において、社会科の学力だけでは不合格となる時代が始まるのです。言い換えれば、文系・理系の区分が廃止され「文理融合型」の学力養成が必然化する流れが始まります。
⑫さらに「期待される人間像」も大きく変わります。AIに既存の仕事が奪われて無くなるのなら、新たなICT時代に誕生する600万種を超える新規の仕事を「立ち上げる能力」を持った人材が強く求められます。一言で言えばベンチャー企業を立ち上げられる人材です。この教育改革を「STEM教育改革」と呼び、本校は「埼玉大学STEM教育研究センター「と提携して本邦で最初に」このSTEM教育を高校カリキュラムとして「理系先進コース」に導入した学校です。このコースの生徒の成果はすばらしいものです。このコースの女子生徒は、昨年、東京都が主催した「ベンチャー企業・立ち上げコンテスト(TOKYO STARTUP GATEWAY 2019)」において、1803社参加の激戦を勝ち抜いて優秀賞に輝き賞金50万円をゲットしています。なお、この生徒はすでにベンチャー企業2社を立ち上げています。また、理系先進の生徒達は日本初の「ドローンサッカー大会」で優勝と準優勝を勝ち取ったのをはじめ、「大阪芸術大学アートコンペテイション作品部門優秀賞」、「数学オリンピック日本予選出場」、学生起業家集団による学生起業家創造プロジェクト「AMBITIOUS」によるビジネスコンテストで「準優勝」、「WRO(世界ロボット大会)Japan2018東京都優勝」等々、飛躍的な活動を展開しています。進学先は東工大や筑波大や千葉大や早慶の理工学部を中心にGMARCHなどの難関大学の理工系学部を目指しています。
⑬もう一つの高1からの専門コースである「国際教養コース」は、英検準2級以上取得者を対象として募集する「グローバルコース」です。駒中生は中3終了までに英検準2級以上を取得させる最終プログラムとして「セブ島語学研修」を実施しています。本コースは、教育特区校としての特色ある「国際カリキュラム」で生徒を育成します。早稲田大学国際教養学部教授による「国際金融論講座」、専門講師による「地球村講座」、オールイングリッシュで学ぶ「異文化理解講座」、同じくオールイングリッシュで学ぶ第二外国語の「フランス語講座」、ネイテイブとオールイングリッシュで各教科を学ぶ「イマージョン講座」等々、
「世界で戦うアジアの中の駒込」をスローガンにして研鑽に励んでいます。進学先は、東京外国語大学、国際教養大学、国際基督教大学、早慶上智、GMARCH,そして海外難関大学の国際関係学部です。
⑭これでお分かりのように、本校は一つのモノサシで輪切りにされた生徒募集は行いません。むしろ、「誰もがやらないからこそ自分がやる!」という、ハイリスクハイリターンのリスクテイクのとれる人材を求め育成して行きます。AIを使いこなし、価値観やスキルの異なる多様な人々を束ねるリーダーシップのある人材を育成して行きます。
近年、大学入試でも受験生のこうした「特色ある資質」をテストして評価する入試方法が熱心に検討され始めています。本校は大学から「ぜひきてもらいたい」というオファーのかかる生徒を育成します。すでにそれも始まっており、国立大学の「高大接続教室」に高2で合格して、最先端の猫型ロボットの研究室で学んでいる生徒も居ます。今後は学びの目的や意義も大きく変わります。それが次期指導要領で導入される「アクテイブラーニング(能動的学習法)」です。「思考力の活性化を図る学び」です。本校はすでにその先進校として所轄庁から高い評価をいただいている学校なのです。
⑮本校が選択する道も自ずから定まります。「AIに代替されない能力を持った生徒」を育成する「学び舎」とすることです。ただし、大切なことは「全ての生徒に平等に門戸を開くこと」です。一部のエリート教育に走るべきではありません。本校にご縁のあった生徒すべてを「次世代のニューリーダー」として育て上げることを基本方針としてまいります。
⑯そのために本校の入試改革を行っているのです。本校では「自己表現入試」・「プログラミング入試」・「PISA(適性検査型)Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ入試」・「英語入試」・「2科・4科入試」そして「特待1科〔算数〕入試」と、その生徒の特異とする入試を実施しているのです。落とす入試ではなく、引き上げる入試、インプット入試から「アウトプット入試〔能力を引き出す入試〕」に切り替えているのです。生徒の今後の「ノビシロを観る入試」です。生徒は全て「未来からの来訪者」であり「未来型生徒は全て天才」です。言い換えれば全ての生徒は「幼いモーツアルト」なのです。しかし、「虐殺されたモーツアルト」の何と多いことでしょうか!わが子を「偏差値で序列づける前」に、一度、天空の星々の輝きで心を明るく染め抜いて、「未来志向の子供」に育て上げたらいかがでしょうか?
駒込学園がなぜ今と云う時代と戦うのか?それは本校の330年の歴史と伝統が教えてくれます。「子供は未来であり、国の宝である」からです!
⑰終わりに、本校の「求める生徒像」を記しておきます。
1 ひとりで居られる 一人を楽しめる
2 さびしさに耐えられる
3 先生や親や社会を憎んだり 大人に依存したりしない
4 あるがままの自分を受け入れて 自分にやさしくできる
5 他人の評価にふりまわされないで、自分の好きな道を歩んで行ける
6 大切なことは自分で選択して決定できる
7 失敗した結果を他人のせいにしない
8 自分は世の中の大きな正義に受け入れられているという強い肯定感を持てる
9 その場にいるだけでまわりが明るくなり元気になる
10 感謝の心を持ち 良心を神仏と約束できる