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2020.03.07

校長ブログ

新入生・保護者の皆さまへ【ご挨拶】

御挨拶

新型コロナウイルス問題への対応について

ご入学おめでとうございます。本来、「新入生集合日」の説明は皆さまに一堂に会していただき実施するものですが、新型コロナウイルス対策として文部科学省から「多くの人が一ヵ所に集まる催しは行わないように」との通達がまいっており、中止のやむなきにいたっております。在校生も3月2日より春休み開始前日の23日まで「臨時休校措置」をとっております。

新入生の皆さんへは、新学期当初の「オリエンテーション期間」で、学校生活全般の心得を丁寧に説明しております。同時に「オリエンテーションのしおり」も配布致しますので、保護者の皆様も「しおり」にお目通しいただければ幸いです。

さて、本校は伝統的に生活指導型の運営方式をとっています。学年会が常時もたれていて、生徒の間に生まれる様々な問題を教員全員が協力しながら処理しております。何かございましたらお気軽にご相談ください。なお、学年を超えるような問題が生じた場合は、生徒指導部長や教頭まで直接ご連絡ください。誠意を持って御対応申し上げます。また、本校はスクールカウンセラーを置いて様々な悩み事の相談に応じていますが、これは生徒だけでなく保護者の皆様にもご利用いただけるようになっています。ご利用の際はお電話でご予約ください。生徒の長期欠席が始まる初期の時点でご相談いただければありがたく存じます。カウンセラーの先生は相談内容の守秘義務を厳守していますので安心してご相談ください。

生徒指導では、保護者の皆様と一体となって「手を離さない 眼を離さない 心を離さない」という子育ての3原則をしっかりと守り抜いてまいります。中高生ともなれば悩みの答えは自分で持っています。傾聴に徹して悩み事を聞いてあげるだけでも、ヒートアップした心の痛みがクールダウンして落ち着き、自然と答えに気づくでしょう。逆に、「それも出来ないのか!全くダメだな!失格だ!」と速射砲のように畳み掛けて叱り飛ばすのでは、逆作用を引き起こすだけです。昨今、日本の学校では自己肯定感が持てず、依存心ばかりが肥大した若者達が激増していますが、本校では入学いただいた生徒達全員「利他の精神」で行動できる自立型の信頼される青年に育ててまいります。苦しいときこそ支えあえる生徒集団を育むことこそが大切であると考えるからです。中高合わせて1,500名を超す大人数ですから若干不心得な生徒が皆無というわけではありませんが、本校の生徒は総じて校長が感心する温かな心を持った生徒ばかりで大変ありがたく思っています。

自分の個性を生かしたいのであれば友達の「自分と異なった個性」も認めなければなりません。本校は「異質の認知」のできる生徒を育成しています。入学当初は期待と同時に不安も大きいものです。それを乗り越えて一致団結するためには、「苦しいことを支えあってやり遂げる体験」が何より大切です。中学の日光山研修,高校の比叡山研修と寛永寺研修がその機会になるでしょう。自分に気づき、自己の内面と他者の心の両者を慈悲の気持ちで捉えることが出来たとき、これらの研修の目的が達成されたと言えます。言い換えれば、これらの研修目的は「自分への気づき学習」なのです。

現在、「新型コロナウイルス」やさまざまな感冒が流行っています。どうぞ気をつけてお過ごしください。入学式についてはどのように挙行できるかを行政官庁の方針と照らし合わせているところです。入学式を含めた新学期のスケジュールを、春休み中に各ご家庭にお知らせ申し上げます。ご理解のほど、宜しくお願い申し上げます。

末尾になりましたが、以下に本校学園誌『駒込だより』に記載致しましたコロナウイルスについての一文を転載しておきます。お目通しいただければ幸いです。

 

新型コロナウイルスSARS-CoV-2について

校長 河合孝允

 新型コロナイルスが猛威をふるっています。コロナウイルスについての基礎的な知見を以下に述べておきます。参考になれば幸いです。

ウイルスと人類

遺伝子はアデニン、グアニン、シトシン、チミンという4種の塩基分子が螺旋状に数億単位で連結して出来ています。そのうちの3つの塩基分子の組み合わせが「トリプレットコドン」と呼ばれ「遺伝子暗号」 となって遺伝子地図(設計図)を形作っています。また、遺伝子にはデオキシリボースからなるDNAとリボースからなるRNAの2種類がありますが、両者とも人の遺伝子地図(設計図)はすでに読み取られています。ところで、私たち人類から細菌(バクテリア) に至るまですべての生物は細胞からできていて、核の中に遺伝子が存在します。しかしウイルスは異なります。ウイルスは細胞を持たずに遺伝子だけで存在しているのです。ただ外側に脂質でできた二重膜の突起や複雑な構造を持ち、その独自の形によって、どのような生物の細胞に侵入できるかがきまっています。鳥インフルエンザウイルスは通常人には感染しませんが、形を変えて変異をすれば人にも感染するようになります。ウイルスの中で王冠状の構造を取るものをコロナ(王冠型)ウイルスと呼びます。ウイルスは通常バクテリアに取りついてその遺伝子を解体して自分の遺伝子に組み替えて増殖していきますから「バクテリオファージ」とも呼ばれます。「ファージ」は「溶かす」の意味です。

さて、新型コロナウイルスSARS-CoV-2についてです。このコロナウイルスは人体に感染するように変異した新たな王冠型バクテリオファージ のことです。ところでウイルスは種類に関係なく共通のメカニズムで宿主の細胞に侵入して増殖します。ウイルスは前述したように侵入した宿主の細胞の核内の遺伝子を形作るアデニン[A]、グアニン[G]、シトシン[C]、チミン[T]を切り取って自分の遺伝子配列に組み替えて増殖します。まず細胞内に侵入したウイルスはその生物のヘルパーT細胞にとりつきそこをウイルスの生産工場に変えます。細胞はエネルギー分子であるATPをはじめさまざまな生命活動物質を生産する工場です。当然遺伝物質もとりこまれ合成されます。このとき取り込んだものが危険なウイルスであれば「宿主生物」はただちに攻撃を開始してウイルスを殺しますが、ウイルスは変異して安全な「擬態」をとるので見逃されてしまうのです。このとき宿主側が、その侵入者が危険か否かを判断するのは、「過去に滅ぼしたウイルス」と「同じ遺伝子」を持つウイルスかどうかの判断なのです。言い換えれば、滅ぼしたウイルスの遺伝情報はきちんとその「宿主生物」の遺伝子座に記憶されていて、それと同じ遺伝子を持った侵入者は敵と判断され攻撃され滅ぼされるのです。これが「抗原抗体反応」と呼ばれる「免疫システム」です。抗原抗体反応のでき上がっている家系の人はそのウイルスを撃退する免疫システムができあがっているので、疾病にかからずにすむのです。しかし、そうでない家系の人はかかってしまいます。これが家系によっても民族によっても差異が生まれる理由です。つまり、コロナ肺炎で劇症になる人と陰性のままの人の差がうまれるのは、そのウイルスに対する「抗原抗体反応」の「免疫」の差、言い換えれば、そのウイルスや類似ウイルスを敵と見抜く遺伝情報を獲得していたかどうかによるのです。予防注射は、ウイルスを滅ぼした人の抗体をもらって、それを事前に投与することによって免疫システムを作り、侵入してきたウイルスを殺して食い止めるための医療行為なのです。

ところで、「T細胞」に取りついたウイルスは「逆転写酵素」と「インテグラーゼ」と「プロテアーゼ」の3つの物質を用いて増殖します。この増殖メカニズムはどのウイルスも一緒です。逆に言えば、この3つのうちのどれかひとつを不活性化すればウイルスは増殖できなくなり感染しなくてすむということになります。世界中の研究者が今取り組んでいることが、このウイルスを不活性化する阻害薬の開発なのです。

ところで、ウイルスが用いる「3つの物質」のうちのひとつである「逆転写酵素」の役割は、ウイルス自身の持つ遺伝子地図(設計図) を複製(転写)することです。そしてこの複製された遺伝子を細胞の核の中に送り込む働きをするのが「インテグラーゼ」です。このようにして、ウイルスのRNAが核に送り込まれた「宿主の細胞」は、ウイルスの設計図通りのたんぱく質の合成を開始してしまいます。そしてこのたんぱく質のつながりを切り離し、ウイルスと同じ遺伝子に組み立て直すと自分と同じウイルスが無数に誕生するのです。このとき、たんぱく質の切断を行う働きをするのが、ウイルスが持っている「蛋白質分解酵素プロテアーゼ」なのです。研究者たちは今このプロテアーゼを不活性化する阻害剤の開発を開始しているのです。つまり、ウイルスの持つ蛋白質分解酵素プロテアーゼのハサミの部分に入り込みそこが動かなくなる阻害剤を開発しているのです。

今年の2月5日、新型コロナウイルスSARS-CoV-2の持つ「COVID-19プロテアーゼ」のX線構造が突き止められました。このCOVID-19プロテアーゼはHIVウイルスが持っているHIVプロテアーゼと同様に、蛋白質を切断するハサミの部分にヒスチジンとシステインというアミノ酸残基があり、これが「ハサミの刃」の役割をしていることが分かったのです。したがってこの部分の分子を不活性化してしまえばCOVID-19プロテアーゼを阻害して新型コロナウイルスSARS-CoV-2の増殖を止めることができます。そしてすでにその開発は一部成功していて、その新薬は「N3」と呼ばれています。あとは臨床実験を経て承認を受ければ医薬品として販売されますが、安全を確かめるための臨床実験に時間がかかるのです。そこで同様の働きをして、すでに市販されているプロテアーゼ阻害薬が各国で試験的に患者に投与されているのです。ネルフィナブル、アクザナブル、HIVプロテアーゼ阻害薬、さらには抗インフルエンザ薬アビガン、エボラ出血熱治療薬レムデシビル、抗マラリア薬クロロキン、そして、今回の新型コロナから回復して抗体を持った人の血しょう等が試験的に用いられて効果を発揮しています。日本政府は2月アビガンの投与を認めました。これらがなぜ効くのかは前述した通り、ウイルスの感染メカニズムに共通する「蛋白質分解酵素プロテアーゼ」の働きを阻害するからです。ところで、なぜ近年激症新型ウイルスが突如として現れ始めたのかが問われなければなりません。遺伝子操作技術を「CRISPR(クリスパー)技術」といいます。そしてこの技術が、過去にウイルスが宿主に感染して、その宿主の遺伝子を切り取った情報を利用した「遺伝子切断技術」なのです。すなわち、遺伝子を自由に切り取るハサミとして過去のウイルスを使っているのです。この技術は花も野菜も穀物も牛豚鶏もウサギも猫も犬もすべての生物の品種改良に用いられています。このクリスパー技術は高校生でも簡単に操作できる技術です。理論的には人の遺伝子を操作して理想通りのモザイクチルドレンをつくりあげることも可能です。すでに癌などの遺伝病の治療に用いられています。同時に軍事上の生物兵器としての開発にも使われています。自然界のウイルスに対しては、すでに人類の多くは抗体をもっています。それが近年都市部からいきなり激症ウイルスが発生するのは、研究室の実験で開発されたウイルスが漏れ出た人為的なミス以外ありえません。「遺伝子操作技術・クリスパー技術」は「諸刃の技術」なのです。ナノ化(1千万分の1センチ化)した「自動増殖AI」にウイルス情報を組み込んで軍事利用することも可能な時代を迎えているのです。取り扱う人々の高い倫理観が求められる時代です。同時に国民すべてが正しく的確に科学的知識を持って対処すべき時代です。生徒のみなさんも正しい情報力をもった若者として成長して下さい。大切な人たちの生命を守るために。