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2026.09.10

部活動

【演劇部】「東京都高等学校演劇連盟主催、東京芸術劇場共催ワークショップ」

「高校生と顧問の先生方のための劇場ワークショップ」レポート

演劇部顧問 武石慎一

8月7日(金)、本学勧学ホールにおいて、東京都高等学校演劇連盟主催、東京芸術劇場共催による「高校生と顧問の先生方のための劇場ワークショップ」が開催され、都内全域から23校190名ほどの生徒と教員が参加しました。このワークショップは、長年、8月上旬に池袋西口にある東京芸術劇場内で実施されてきましたが、実際に地区大会の会場となっている学校を利用しての開催を望む声が大きくなり、昨年度の都立豊多摩高校(城西地区大会の会場の1つ)に続き、本年度は駒込で開催することになったのです(勧学ホールは中央地区大会の会場の1つとして20年以上利用されています)。

このワークショップは、照明・音響・舞台の3部制で、各部1時間ほどの合計3時間以上におよぶ講習であり、全て東京芸術劇場で実際に舞台の運営を行っているプロのスタッフの皆さんが講師となって行われるハイレベルなものです。

最初の照明講習では、まず、部の予算がなくて(演劇部は弱小なところが多いので、あるあるです)照明の灯体が3本しかない「都立芸劇高校」の演劇部が、普通の教室で公演を行うことになった時、どのように明かりを照らしたら教室が劇場になるのかというテーマから始まりました。照明スタッフの3名が、引退した高3の先輩2名と、あとを継いだ高2の後輩1名に扮し、漫才のようにかけあいながら、舞台において照明がどんな役割を担っているのかを分かりやすく説明して下さいました。芸達者な皆さんで、説明中何度も笑いが巻き起こっていました。

その後、照明の当て方の違いによって、舞台上の人間がどのように異なって見えるのかというテーマに移りました。ここでは、実際に舞台に立った人間や置いた人形に光を当て、当て方ひとつで登場人物の心情の表現や舞台背景の状況説明が可能であることを示して下さいました。

2つ目の音響講習では、視覚に影響する照明と、聴覚に影響する音響の、それぞれの役割の違いの説明から始まりました。

また、効果音を最近はデジタルで作ってしまう人が多いが、アナログで作ったものの方が臨場感は上であることを、さらには生音で出した方がよいことを、実際の効果音を出すための機材を使って実演して見せて下さいました。その上で、太宰治『走れメロス』の一節を参加者の中から選ばれた学生に朗読してもらい、そこに異なった効果音やBGMを付けるとどうなるのかの実験を行いました。最初は単なる砂嵐、続いて2.5次元(マンガやライトノベルを原作として、ビジュアルや音響・舞台装置にこだわったミュージカル作品をこう呼びます。代表作は『テニスの王子様』『刀剣乱舞』など)風の躍動感あふれるBGM、そして最後はネットフリックス作品風の重々しいBGM。全く同じテキストなのに、音ひとつでこれだけ雰囲気が変わるのかと、参加者一同驚きを隠せませんでした。

最後の舞台講習では、まず舞台周りを黒くすることの重要性が示されました。舞台そのものに余計な色が存在してしまうと、照明も映えないし、観客の没入感が削がれてしまうからです(勧学ホールも袖板が木目なので、そこに黒い幕をかけて、舞台を見た時に木目が目に入らないようにした方がいいことを実演して下さいました)。そこで、教室を舞台にする場合、背景を真っ黒にするための黒幕をどうやって張ったらいいのかを、脚立やパネルと人形立て(木製パネルを立てるためにパネルの後ろにつける三角形の脚のことをこう呼びます)を利用してその場で実演して下さいました。

また、舞台に直接座ったり寝転んだりする演技をすると、舞台の高さや観客席の位置によっては、役者が見えなくなってしまうことが多いので、それを防ぐために舞台上に段差を作ることの重要性も示され、平台(舞台上に高さを作るための木製の平らな台のこと。本校には当時の演劇部員が自ら作った平台が2種7台あります)に箱馬(舞台で使われる非常に頑丈な木製の箱のこと)をどのようにつけたらいいのかも実演して下さいました。平台も箱馬も大抵のホールにあるものですが、それに釘を打っていいかどうかはホールによって異なるので、釘打ち禁止の場合に粘着テープだけでも十分に固定できることを実演して教えて下さいました。

ちなみに、平台にも黒い布を貼って、とことん木目が入らないように配慮していました。

そして、最後の最後に今日学んだことを全て活用して、音響講習の時に使った『走れメロス』のテキストを再び使用し、箱馬を付けた平台の上で朗読している人に本校の照明器具をフル活用して光を当て、もちろん音響効果も存分に使って場面作りを行いました。朗読する人や、音響卓(音量や音色を操作するための機械)の操作は参加している生徒たちから選ばれ、本校の生徒も選出されて素敵な体験をしていました。(1-D新井暁登)

こうして、ワークショップは大きな盛り上がりとともに終了し、参加した生徒たちは、舞台上に立った生徒もそうでない生徒も、非常に満足度の高い時間を過ごすことが出来、みな笑顔で解散しました。

今回のワークショップに会場責任者として参加して、一番驚きを隠せなかったのは、実は実際のワークショップそのものではなく、その準備段階でした。まず6月に会場の下見を2時間かけて行ったのですが、勧学ホールの大きさがどのようなもので、構造がどのようになっているのかだけではなく、会場内の電気容量がどのくらいなのか、電気系統がどのようになっているのか(各コンセントがどのようにセットになっているのか)をスタッフの皆さんは綿密に調べていきました。照明装置も音響装置も電気がないともちろん動きませんが、使っている電気の容量がオーバーしてしまえば、当然のことながら安全装置が動いてブレーカーが落ちてしまうからです。公共のホールでしたら、ホール仕様書に全てそれらのことが明示されているのですが、学校のホールではそんなものを普段見ることはありません。これらのことを聞かれて、慌てて事務室で校舎の設計図を探し出し、実際の配電盤をみんなで確認しに行き、ワークショップ開催に問題がないことが確認できた時は心底ホッといたしました。

また、前日の10時から、休憩を挟んで6時間かけてセッティングを行い、当日も朝9時に集合して何度もリハーサルを行って、問題点があればその場ですぐに修正していく姿に、まさにこれこそがプロの仕事なんだと感銘を受けました。中でも『走れメロス』の3種類の照明が、あっという間にでき上がっていくのは楽しかったですねぇ。そして一番驚かされたのは、舞台スタッフの方々が、ステージ横の演劇部の倉庫を眺めながら、使えそうな材料や道具を次々に取り出して、ワークショップで使うものをその場で次々に作ってしまっていたことです。舞台装置作りはいつも悩まされるものですが(今年も散々悩みました)、経験を積んで引き出しを多くしていれば、モノを見てすぐ思いつけようになるのだなぁと感心いたしました。私ももっと経験値を上げないと。

この劇場ワークショップは、来年度以降も実施されていく予定です。来年度、どの学校を会場にするのかはまだ決まっていませんが、参加するには演劇部員である必要があるので、劇場スタッフの仕事に興味のある方は、ぜひ演劇部においで下さい。お待ちしております。